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正しい食英語講座#4 シュークリームは英語でもフランス語でもないんです


ぷく〜っと膨らんだ生地の中に、カスタードクリームやホイップクリームが入ったシュークリーム。
老若男女問わず、日本で親しまれているお菓子のひとつです。お菓子屋さんの定番で、スーパーマーケットやコンビニでもおなじみですね。

このシュークリーム、欧文表記にするとどうなるでしょう。

あえて綴ると、chou creamとなります。
あえて、と言ったのは、シュークリームは完全なる和製(英)語だからです。
シュー(仏語:chou) + クリーム(英語:cream)
と、フランス語と英語が混在する言葉になります。

というのも、シュークリームはそれぞれ、
フランス語:シュー・ア・ラ・クレーム(chou à la crème)
英語:クリーム・パフ(cream puff)
と呼ばれるからです。

シュークリームは英語でどう言う?

シュークリームをフランス語でシュー・ア・ラ・クレームと呼ぶのは、知っている人も多いかもしれませんが、英語ではクリーム・パフというのは、さほど一般的ではないかもしれません。
クリーム・パフは直訳すると、「クリームが入った、ぷっくり膨らんだもの」といったニュアンスでしょうか。
中が空洞になった、サクサクのお米の加工品に、ライス・パプがありますよね。ある年代以上の方にとってはポン菓子の方がイメージしやすいかもしれません。
このライス・パプの「パフ」こそが、クリーム・パフの「パフ」と同じく、「ぷっくり膨らんだもの」なのです。

イギリスでは、シュー生地のことを、フランス語のシューをそのまま受け継ぎ、シュー・ペイストリー(choux pastry)と呼びます(※chouxはchouの複数形)。
フランス語そのまま、パータ・シュー(pâte à choux)で表す、もしくは併記することもあります。

シュークリームが英語でクリーム・パフ(cream puff)なら、英語のシュー生地はパフ・ペイストリー(puff pastry)と思いきや、そうではありません。
パフ・ペイストリー(puff pastry)は別の生地で、軽い食感でも、サクサクの折り込みパイ生地、フランス菓子でいうところの「フイユタージュ生地」に該当します。

イギリスで一般的なシュー生地のお菓子はこれ

ところで、他の英語圏はわからないのですが、イギリスではシュークリームにお目にかかりません。
同じシュー生地を使ったお菓子であれば、一口サイズのプロフィトロール(profiterole)や、お祝いの場などで登場するクロカンブッシュ(croquembouche)は見ます。
もっともメジャーと思われるのは、エクレア(éclair)です。
当然といえば当然ですが、フランス菓子店や仏料理店で見ることが多く、フランス語そのままで表記されます。

実際、私がイギリスのクッカリースクールで学んだシュー生地のお菓子はエクレアでした。アレンジで習ったのも、プロフィトロールであり、甘くないグジェールであり、シュークリーム(クリーム・パフ)は登場しませんでした。

シュークリームではなくエクレアは、フランスでは基本中の基本のお菓子とされます。
物理的にフランスに近いイギリスでも、シュー生地を使うお菓子ではエクレアが、もっとも一般的なのはそのためかもしれません。


文=羽根則子
食のダイレクター/編集者/ライター、イギリスの食研究家。出版、広告、ウェブメデイアで、文化やレシピ、技術、経営など幅広い面から食の企画、構成、編集、執筆を手がける。イギリスの食のエキスパートとして情報提供、寄稿、出演、登壇すること多数。自著に、誠文堂新光社『増補改訂 イギリス菓子図鑑』など。






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